強引上司の恋の手ほどき
「……菅原千波です」

小さな声で名前を言うのがやっとだった。

「千波も美優もとにかく座って」

郡司さんにそう言われたけれど彼女を「美優」と呼んだことに衝撃をうけて、私は彼に手を惹かれるまでその場に立ち尽くしていた。

……名前を呼び合うような仲なんだ。

目の前の彼女は私に笑顔を向けている。私には微塵もそんな余裕ないのに。

「千波さん、私と同じ年なんですってね。兄から聞きました」

美人は声も可愛いんだ……。

どうでもいいことを考えてから、彼女の言葉が引っかかる。

「あの……兄って?」

私に島津さんという男性の知り合いはいただろうか?

「はい……兄ですけど」

私の反応が不思議なのか、兄と言いながら郡司さんを指さした。

「郡司さんが、お兄さん?」

「あれ、お兄ちゃん、まだ話してなかったの!? ごめんなさい」

「今から、話そうと思ってたところだ」

ティールームのホールスタッフに「コーヒーふたつ」と郡司さんが注文している間も私は、脳内の整理で忙しかった。
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