強引上司の恋の手ほどき
「美優は社内で、社長の娘だということは隠しているんだ。色々面倒なことになるといけないからな。しかしそれを中村はどこからか聞きつけて、言い寄っていたらしい」

「兄の会社の人だったので、相談に乗ってもらってたんです。それでちょうどバレンタインだから、久しぶりにお兄ちゃんにもチョコを……と思って」

それであの紙袋だったのだ。盛大な勘違いをしていた自分が恥ずかしく、話を聞くたびにどんどん顔が赤くなっていく。

ちらりと郡司さんの方を見て「ごめんなさい」と小さな声で言うのがやっとだった。

「勝手に勘違いしやがって」

ジロリと私を睨んだあと、優しく笑った。

「でも、まぁヤキモチもたまには悪くないな」

からかうような笑顔の後、郡司さんは急に真剣な顔になった。

「中村のことが決着つくまで、美優の話はできなかったんだ。俺の素性についても話すことになるしな。不安にさせてごめん」

膝に置いていた手をぎゅっと握ってくれた。久しぶりの彼の暖かさに安堵する。

「おふたりの邪魔しては悪いので、私は——」

私に気を遣い立ち上がろうとした美優さんを、郡司さんが止めた。
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