強引上司の恋の手ほどき
「そんなに頑張らなくていい。そのまま——今のままのお前でいてくれればそれでいい」

私の髪に彼が顔をうずめて、大きくため息をついた。

「はぁ……よかった。それと言っとくけど、社内の女に手をつけたのは千波だけだからな。調査中は色々話を聞くのに、女の子には優しくしてたけど」

そんな気弱な言葉が聞けるなんて思ってもみなかったから、驚いて彼の腕の中で顔をあげた。

「私が嫌だって言ったら、どうするつもりだったんですか?」

「さらって監禁すでもるかな」

彼らしい言葉に笑ってしまう。これがいつもの郡司さんだ。

「よかったです。監禁免れて」

「いや、今からそれに似たことするつもりだけどな。さぁ行くぞ」

私の手を引いて車へと向かう。

「似たことって……? それにどこに向かうんですか?」

問いかけた私を振り向いて、彼が当たり前のように言う。

「俺の部屋。バレンタインからずっとおあずけなんだ。それともここでする?」

「ばっ! バカなこと言わないでください」

「そうだ。俺がバカなことしないうちにさっさと車に乗ってくれ」

声を上げて笑う郡司さんに次いで私は急いで車に乗りこんだ。
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