強引上司の恋の手ほどき
『そんな誰にでもできる仕事ほうっておいていいよ』

「え?」

『千波が今やってる仕事って誰でもできる仕事でしょ? だったら残業してまでやる必要あるの?』

中村くんの言っていることは間違っていない。確かに誰でもできる仕事だ。でもだからと言って、投げ出していいものではない。

誰でもできる仕事だけれど、誰かがやらなくてはいけないのだ。

「でも、これは私の仕事だから、途中で放り出せないよ」

『千波は俺に会いたくないの?』

「会いたいよ。でも仕事だから……」

『もういいよ。無理言った俺が悪かった。会いたいのは俺だけなんだね』

「ちが……」

私の反論の声を遮るように電話が切れた。

「違うのに……どうしてわかってくれないの」

思わず机に額を付けて愚痴ってしまう。

「誰に分かってほしいんだ?」

誰もいないと思っていたのに、急に声をかけられ、ビックリして飛び起きた。

「課長……。本部長と飲みに行くって言ってませんでしたか?」

「あぁ、そのつもりだったんだけど、乾杯の後抜けてきた。オッサンたちの相手なんて真面目にできるわけないだろう。ちょっと気になる仕事が残ってるし」

肩を鳴らす姿だけで疲労が伝わってきた。
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