強引上司の恋の手ほどき
「ご迷惑をおかけしました」

「なに、改まってるんだよ。でもそんなに感謝してるって言うなら、お礼してもらおうかな?」

「いいですよ。私にできることなら」

マウスを操作してパソコンの電源を切る。シャットダウンしたのを確認してから課長の方を向くと、ちょうど椅子から立ち上がったところだった。

「ふーん。できることなら……なんでもねぇ」

「はい……あの、どうかしましたか?」

なにが言いたいんだろう。お礼なんだから誠心誠意尽くすのが当たり前なのに。

「じゃあ、これから俺とデートな」

「で、デートって、デートですよね?」

自分でもトンチンカンな質問をしたと思う。けれどそれぐらい私は動揺していたのだ。

「そう、デート。男女がが楽しい時間を過ごすこと。仮にも俺はお前の恋愛能力を高める手助けをしているわけだ。お前の恋愛偏差値を計る意味でも良い提案だと思うけど」

言われてみればそうなのかもしれない。中村くんしか知らない私は、経験不足から悩むこともたくさんある。いくら雑誌のデート特集を読んでみたところで、実際の経験にはかなわない。

……まさに百聞は一見に如かず。

「お願いします」

気合の入った私は思わず大きな声を出してしまう。

「じゃあ、行くぞ」

歩き始めた課長の背中を追いかけた。

しかし、モテる男の人ってこんなに簡単デートに誘うんだ。やっぱり培ってきたスキルが違うのか。

「なにやってるんだ。ほら、乗れよ」

先にエレベーターに乗って待っていてくれた課長の横に急いで並ぶ。すぐにエレベーターの扉が閉まって私達を一階へと運んでくれた。
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