強引上司の恋の手ほどき

「あの、デートってここ……ですか?」

「あぁ、とっておきの場所だから、本当は誰にも教えたくなかっただけど。お前は特別な」

特別扱いされて光栄です。……だけどここって。

私たちは行列の一番最後に並んだ。行列の先にはラーメン屋さんの暖簾が見える。

「ラーメンですか?」

「あぁ、うまいぞ〜味玉は絶対のせろよ。でないと、絶対後悔するから」

「はい。そうします。でもまさかラーメン屋さんだなんて」

課長がデートって言うからもっとオシャレなレストランやダイニングバーなんかを想像していたのに、あまりにも違いすぎて驚いた。

でも、きっとそんなところに連れて行ってもらっても、今日の私は喜びよりも疲れを感じそうだった。

だから課長のセレクトしたこのお店は、私にとってとてもありがたかった。

「あ、なにも言わずに連れてきたけどラーメン好きか?」

返事をしようと口を開く。

——グー

しかしその前に私のお腹の虫が返事をした。

恥しい。もうどうしてこんなタイミングで!

「あははは。腹の虫は正直だな」

「すみません」

顔がカッと熱くなって火を吹きそうだ。

「ほら、もうすぐ俺たちの番だ。なににするか決めろ」

「課長は、なににするんですか?」

「チャーシュー麺、味玉のせ。お前は、お前の好きなもの頼めばいいだぞ。合わせる必要ない。ほら、なにが食いたいんだ?」

中村くんと食事するときは、ほとんど彼がお店もメニューも決めてしまう。

それはそれでいいと思っていたけれど、こんなふうにふたりでメニューを見ながら、あーでもないこーでもないって話するのも楽しいな。
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