強引上司の恋の手ほどき
次の瞬間……私の体は課長の胸に包まれていた。

上司として尊敬してい憧れてはいるけれど、これはちょっと行き過ぎのような気もする。

急いで距離をとろうと、課長の胸を押したが逆に力を込められて身動きできなくなった。

「いいから、泣き顔見せたくないんだろ? こうやってれば見えないから。これも練習だと思え。相手にちゃんと甘える練習だ」

「甘える練習ですか?」

「ああ。女の子は甘え上手な方が可愛い」

そう言うと私の髪をそっと優しくなでてくれた。

これが上司と部下として普通じゃないことくらいは私にもわかっている。

けれど『練習』という言葉を免罪符にして、私は今の状況を受け入れていた。

「じゃあ、次は思っていることをちゃんと話せるようにする練習。ほら、どうぞ」

どうぞって言われても……どう伝えていいのか分からない。

「別にきちんと話しようと思わなくていいい。頭に浮かぶ言葉をただ口にすればいいんだ。ほら、やってみろ」

優しい声に誘導されるように、私は口を開いた。

「……なんだか、全然うまくいかなくて。私全部初めてで、どうやったらいいのかわからないんです。中村くん、本当に私の事好きなのかなって」

「あぁ。でもそういうことは本人に訊くしかないだろ?」

「出来ませんそんなこと。嫌われたら困ります」

うざいと思われたら……どうしよう。

そう思うと、とてもじゃないけど私の気持ちを言うことができなかった。
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