強引上司の恋の手ほどき
翌日、あんなことがあっても、きちんと目覚まし前に目が覚めた。いつもどおりに身支度をして、いつもどおりの時間に出勤をする。

いつも私は混みあう電車が苦手で、他の社員に比べて早めに出社していた。

今日も誰もいないロッカーに荷物をと置くと、最初に給湯室に向かって昨日の定時後に出たゴミの片付けやフキンのを済ませる。

そしてその後は新聞を昨日のものと差し替えてからふたたび、給湯室に戻って自分の飲むコーヒーを淹れる。それがいつもの日課だった。

お湯を準備している間にドリップ式のコーヒーをカップにセットした。今日は二人分だ。

ひとつはいつも朝誰よりも早く来ている課長のぶんだ。昨日のお礼といえば簡単すぎるが、気持ちの問題だ。

来客用のカップと、自分のマグカップを並べお湯を注ぐ。

ゆっくりとコーヒーの粉の上にお湯をまわしかける。狭い給湯室に一気にコーヒーの香りが立った。

いつもの朝の光景だったが、今まで入社して朝のコーヒーを自分以外に淹れたことなんてなかった。それだけでなのだが、いつもの朝とは違って感じた。

「出来た。こぼさないようにしないと……」

カップを持って給湯室を出ようとする。
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