強引上司の恋の手ほどき
見られていても誤解されるような状況ではなかったはずだ。

「昨日は残業になって、遅くなったのでふたりでご飯を食べていただけです」

課長に相談に乗ってもらっていただけなのに、変な誤解をされて迷惑をかけてはいけない。

私はそう思い、できるだけ誤解されないように話をした。

「そうだったんですね。安心しました。中村くんのようなかっこいい彼氏がいるのにまさか課長にまで手を出すなんてことありえませんよね」

笑顔だったけれど、棘のある言い方だ。

居心地の悪さを覚えた私は、その場を離れることにした。

「そうです。私が付き合っているのは中村くんです。課長は関係ありません。失礼します」

私は大西さんの顔を見ずに給湯室を後にした。

廊下を歩きながら、出社してきた社員に挨拶を交わす。

しかしそうしながら、私の頭の中では先ほど自らが口にした言葉がリフレインしている。

『課長は関係ありません』

何故かこの言葉が私の頭の中を占領していた。

経理課のフロアのドアを開けると、電話中の課長がすぐに気づき私を呼び寄せた。
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