強引上司の恋の手ほどき
「ごめんね、こんなところまで」
「いえ、あのどうかしましたか?」
わざわざこんなところで話すなんて大事な話だろう。
「菅原さんって、営業の中村くんと付き合ってるんだよね?」
今日はなんだか周りからよくこの質問されるな……。
別に隠しているわけじゃないので「はい」と返事をする。
すると、加藤さんは眉間に皺を寄せて、はぁ……と大きなため息をひとつついた。
「こんなこと、私が口を挟むべきじゃないのかもしれない。でも彼は気を付けた方がいいと思う」
「どういうことですか……」
加藤さんがわざわざ私の耳に入れるということは、よほどのことだろう。私は、不安を隠すこともせずに彼女に尋ねた。
「実は私、中村くんのマンションの近くに住んでるの。駅が同じだからなんどか見かけたことがあるのよ。向うはたぶん気が付いてないだろうけど」
私は、手に持っている訂正印をもらったばかりの経費精算書を握り締める。
「女の人と歩いてるの何度か見たの。たいていいつも同じ人よ。彼、他に女がいる可能性ないの?」
そんな……付き合ってほしいといわれてから二ヶ月とちょっと。私はまだ彼の部屋へと足を踏み入れていない。でもその女性は彼の部屋へと行ったということ?
他に彼女がいる? 私の他に?
だまって色々と考えてしまう。そんな私の様子を見て加藤さんが心配そうに私の顔を見ている。