強引上司の恋の手ほどき
「え〜、深沢課長ってかっこいいけど誰にでも声かけるって本当だったんだぁ」

「誰にでもって、それ私に失礼じゃない?」

ケタケタと笑い声が響く。

「でも、誰も付き合ったって噂聞かないよね? どうしてだろう」

「付き合わないけど、やることはやるとか?」

「やだー! 昼間からやめてよ。でも課長だったらアリかな……」

楽しそうに話している背後の雰囲気とは裏腹に、私はモヤモヤとする。あまりにも私の知っている課長とは違うからだ。

頑張って食べていたうどんも、ついに食欲が減退してしまいお箸をおく。

向いの美月さんは「チャラい」と潰いて、目の前のコロッケを大きな口で頬張っていた。

私は小声で尋ねてみる。

「美月さんも課長は“チャラい”って思うんですよね?」

「うん。だけど……見かけだけのような気もする」

お茶をすすりながら、考えを聞かせてくれた。私はそれを真剣に聞いた。

「きっと、わざとそう見せてるんじゃないかな。理由はわからないけど。そうじゃないと、もう社内で二・三人被害者がでてると思うんだよね。だけど実際は声をかけられたりしただけで、女子同志がもめることも『ポイ捨てされた!』って大騒ぎする人も出てこないじゃない? むしろみんなあのチャラさに好意的じゃない?」
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