強引上司の恋の手ほどき
「盗み聞きするなんて、サイテーです」

強い敵意に満ちた視線を向けられた。しかし彼女の言うことが正しい。私は小さな声で「ごめんなさい」と呟くように言うことだけが精一杯だった。

ドンっと肩をぶつけて、大西さんが休憩ブースを出た。

そこに残されたのは、気まずそうに髪を掻き上げる課長と私だ。

急いで散らばった資料を集めていると、課長も屈んで手伝ってくれた。

しばらく沈黙が続いたけれど、最初に声を発したのは課長だった。

「なにか、用事があってここまで来たんだろう?」

色々とあって本来の目的とどころではなくなっていた。しっかりしなければと思うけれど、気持ちがうまく切り替えられない。

「はい、あの朝言われていた資料がこれで合ってるかどうか……」

拾い集めた資料を手渡す。課長は無言で受け取ると、中身を確認している。

「うん。これで合ってる。他の仕事もあるのに大変だっただろう? ありがとう」

「はい……あの」

首を突っ込むべきではないとわかっている。だけど気が付けば私は課長に聞いていた。

「あの……大西さんと付き合うんですか?」

課長の返事を聞きたいような、聞きたくないような気持ちで待つ。
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