強引上司の恋の手ほどき
「あ、こっちは経理課の分なんで後で持っていきますね」

「そっか、千波はあっち所属だもんね。でも、今日は俺のこと応援してくれるんだろ?」

「はい!もちろんです。ゴホッ……ゴホッ。すみません」

「風邪なかなか治らないね。お大事に」

初めて風邪をねぎらうような言葉を聞いた気がする。いつも私が聞き逃していたのかもしれないけれど。

足取り軽く歩いて行く中村くんの後を、私は咳き込みながら追いかけた。

営業課のみなさんがいる場所に、連れて来られた私は、知った顔を何人か見つけることが出来た。

「経理課の菅原さん。今日は俺の彼女として営業課を応援してくれます」

パチパチパチ……。

小さな拍手が起きて、話の中心にいる中村くんは満足そうだ。だけど一緒にいる私はなんだかいごこちが悪い。

何度か話したことがある人もいたけれど、やはり営業課のメンバーでない私は疎外感が半端ない。

彼の周りにいた人たちに、お互いの馴れ初めなんかを聞かれる。中村くんが話すことに相槌を打ちながらなんとか笑顔を作っていた。

私ちゃんと、彼女の役目果たせてるかな?

ふとコートの中を見ると総務部と経理課のメンバーが準備運動を始めていた。対戦相手は加藤さんのいる企画部みたいだ。
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