強引上司の恋の手ほどき
「もうなんとでも言ってくだ……ゴホッ……ごほ……すみません」

顔をそむけて、咳をした。

そんな私の背中を美月さんがさすってくれる。

「まだ治ってないのに、ここに来たの?」

呆れた様子だけれど、仕方がない。無理してここに来ているのは事実なのだから。

「もう、大丈夫ですありがとうございま……」

美月さんにお礼を言おうとしたときに、ぐいっと手を引かれた。

私にこんなことをするのは……ただ一人だ。

「課長……」

さっきまでコートの真ん中にいたはずなのに。

「おい。こんな砂埃が舞うところに来て平気なのか? さっき咳してたみたいだけど」

心配そうに眉根を寄せる顔をみて、不謹慎だが嬉しくなってしまう。

「本当は寝ていようと思ってたんですけど、無理して来ちゃいました」

「中村か? アイツ知ってるんだよな? お前が体調悪いってこと」

急に中村くんの話が出てきて驚いた。

「もちろん……彼氏なんですから、知ってますよ」

「知ってて連れてきてるのか!?」

課長の眉間の皺がどんどん深くなっていく。
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