強引上司の恋の手ほどき
そんな私達のやりとりを、隣でおかしそうに美月さんが見ていた。

「課長、お取り込み中申し訳ありませんが、もう試合ですよ」

美月さんに声をかけられて、課長がちらっとコートを見た。

そして自分の荷物のところまで走って行くと、バッグから個別包装されたマスクを取り出した。

「これちゃんと付けておけ」

私に渡すとそのままコートへ走って行く。

課長……そんなに優しくされると、恋愛オンチの私は色々と誤解してしまいそうです。

課長の走って行く背中を追ってしまう。

「なにあれ。四次元ポケット?」

「いや〜過保護だね。アンタんとこの上司。まぁ、構いたくなるのもわからないでもないけど」

美月さんと加藤さんがずっと話をしていたが、私はそれに加わらずに課長にもらったマスクをつけて、ピッチを走り回る課長の姿を見ていた。

試合が終わりに差し掛かった時、遠くから中村くんが手を振って私を呼んでいるのに気がついた。

そうだ、次は彼の試合だった。

私は、美月さんと加藤さんに挨拶をすると、急いで彼の元へと走ったのだった。
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