強引上司の恋の手ほどき
それから、何試合か行われて決勝は中村くんの属する営業チームと、経理課の属する総務部チームで行われることになった。
「千波、俺ゴールきめてくるからちゃんと見といてよ」
まるで小学生のような無邪気な中村くんに「わかったよ」と返事をして彼を送り出した。途中で振り返って私に手を振る彼に私も手を振り返す。
そして彼が走っていった先には、課長がこっちを見て立っていた。
(す・わ・れ!)
口パクだったけれど、意味がわかった私は、ベンチに座って試合を見ることにした。
“見といて”なんて言うだけあって、中村くんはピッチを走り回ってパスを受けては、シュートを何本も打った。
ゴールが決まった時は本当に嬉しそうにして、こっちに手をふってくれる。
……ほら、こうやって彼女として大事にされてるじゃない。なんにも不満に感じることなんてない。
彼に夢中になればいい。
そう思う一方で、私の目は同じようピッチに立つ課長を追ってしまう。
派手にゴールを決めるわけじゃないけど、的確にゴールにつながるパスを出している。普段は強引で大胆なイメージだけど、気配りができる細やかな仕事ぶりと、プレイスタイルが似ていた。
こういうのって、性格がでるんだよね。
一見同じように華やかなふたりだけれど、その性質は全然違うのだと改めて感じた。
そんなふたりを、私は遠くから見ていた。
試合が終盤に差し掛かった頃、中村くんが持っていたボールを課長が強引に奪いに行った。
さっきまではどちらかといえば裏方のような動きに徹していたのに、どうしたんだろう?
課長の様子が気になって目が離せない。
課長はするりと中村くんからボールを奪うと、そのままひとりでゴールを決めてしまう。
「すごいっ!」
営業課のベンチにいながら、総務チームの応援をしてしまい白い目で見られた。
そしてそのゴールが決勝点となって、総務チームの優勝が決まったのだった。