強引上司の恋の手ほどき
「ちゃんと、料理してるんだな。冷蔵庫の中見た」

あの日以来、誰かにお弁当を作ってはいないけれど、できるだけ自炊を心がけるようにした。料理教室で習ったのをおさらいしたり、ネットでレシピを探したり。

冷蔵庫の扉にはレシピがマグネットでいくつも貼り付けてあったし、中には食材も幾つか合ったはずだ。それをきっと課長は見たのだろう。

「はい。少しですけど。ポテトサラダはずいぶん上手になりました」

「そうか、また食わせてくれよ。ほら、薬飲め」

コップになみなみと注がれた水と薬を差し出された。私が薬を飲むのを見て課長は小さく一度頷いた。

「気分はどうだ?」

「まだ熱っぽいけど、おかげさまで元気になりました」

笑顔をみせたつもりだったけど、どうやら失敗したみたいで課長の顔が曇る。

「俺の前で無理するな……そんなことしたってバレバレなんだからな。昨日のフットサルだって、どうせ中村に無理やり連れて来られたんだろう?」

図星だ。本当に課長には隠し事が出来ない。

「バカですよね。断ることもできないなんて」

まともに顔が見れずに、うつむく。

少しの沈黙のあと、課長のため息が聞こえた。
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