強引上司の恋の手ほどき
結局私が出社したのは水曜日だった。

火曜日の朝も出社しようと準備していたら、課長から電話があり休むように強く言われた。私は大人しく言うことをきいて、火曜日一日休み体調を整えた。

「おはようございます」

私はいつもの通り給湯室の掃除と、新聞の整理を終わらせて、コーヒーを淹れた。

今日は課長の分も一緒だ。

「おはようございます」

「元気になったのか?」

パソコンの手を止めて、課長が声をかけてくれる。私は自分のデスクにマグカップを置くと、もうひとつ持っていたカップを課長へと差し出す。

「これ、この間ご迷惑かけたお詫びです」

コーヒーを差し出すと嬉しそうにほほ笑んだ。

「やっすいお礼だな。でもうまそう。ありがとう」

受け取ると早速一口飲んでいた。

「美味いな」

小さく笑った彼の顔を見て、私も嬉しくなった。

「体調が戻ったらなら、今日から死ぬほど働けよ。お前がいないと金子の機嫌が悪いんだ。昨日一日悲惨だった」

情けない顔をした課長をみて、私は声をあげて笑った。

笑っていると経理課の内線が鳴る。

こんな朝早くに誰だろう。

「俺が出るからいい。はい……深沢です。それで大阪支社の……」

また大阪支社の話か。ここ最近多い気がする。

課長が電話に出たのを確認して私はデスクの上にある回覧やメモを確認することから仕事を始めようとして、その前に中村くんにメールをした。今日仕事が終わった後に会いたいと。

このときが初めてかもしれない。自分の素直な気持ちを彼に伝えようと思ったのは。
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