ウソ夫婦
ガンッ。
突然、低く鈍い音がして、あすかの気管に空気が流れこんだ。
目が覚めるように、視界が開ける。
真夜中の研究室。
月明かりの中で、金色に輝く髪。
コバルトブルーの瞳がみつめる。
「あすか」
この声……。
あの人の声。
あすかは夢中で腕を伸ばした。
私の大切な人は、今目の前にいる。
この人。
「ジェイっ」
ジェイがあすかの腕を取り、引き寄せる。そのまま、強く抱きしめた。
「あすか……」
二人とも言葉が続かない。あすかの身体を強く抱きしめる腕が、小さく震えている。あすかは自分を包む体温が信じられず、なんども手の平でジェイの背中を撫でた。
「遅くなって、悪かった」
「……うん」
「大丈夫だったか?」
「うん」
「もう、離さないから」
「うん……私も」
お互い抱き合って、存在を確認する。ジェイがあすかの髪を優しく撫でると、徐々に落ち着いてきて、あすかは徐々に周りが見えてきた。