ウソ夫婦
床に、女が仰向けで倒れている。黒い髪が乱れ、顔は見えない。
視線を戻すと、まだジェイの腕の中で、あすかはほっと息をついた。
「生きてた」
あすかは、信じられない思いで、そう呟く。
「もちろん」
「本物?」
ジェイは笑うと、あすかの手を取って、自分の頬に当てる。
「本物だよ」
そう言って、あすかの目の中を覗き込んだ。「やっと思い出した?」
「うん」
「やっとか」
「ごめんね」
ジェイは再び、強くあすかを抱きた。
「さあ、出よう」
コバルトブルーの瞳に鋭い光が灯ると、あすかの身体を立ち上がらせる。
「入口に立っていた男たちは倒したけど、すぐに他に気付かれるから、早く……」
「待って!」
あすかは、出口へ向かおうとするジェイの腕を掴み、とっさに引き止めた。
「あそこにあるのっ。犯罪の証拠が」
あすかは、一番奥の扉を指差した。
「……それは、いい。今はお前を助けることの方が……」
突然、ダダダダダッと、弾けるような音がして、ジェイはあすかをとっさにしゃがませた。