ウソ夫婦

床に、女が仰向けで倒れている。黒い髪が乱れ、顔は見えない。

視線を戻すと、まだジェイの腕の中で、あすかはほっと息をついた。

「生きてた」
あすかは、信じられない思いで、そう呟く。

「もちろん」
「本物?」

ジェイは笑うと、あすかの手を取って、自分の頬に当てる。

「本物だよ」
そう言って、あすかの目の中を覗き込んだ。「やっと思い出した?」

「うん」
「やっとか」
「ごめんね」

ジェイは再び、強くあすかを抱きた。

「さあ、出よう」
コバルトブルーの瞳に鋭い光が灯ると、あすかの身体を立ち上がらせる。
「入口に立っていた男たちは倒したけど、すぐに他に気付かれるから、早く……」

「待って!」
あすかは、出口へ向かおうとするジェイの腕を掴み、とっさに引き止めた。

「あそこにあるのっ。犯罪の証拠が」
あすかは、一番奥の扉を指差した。

「……それは、いい。今はお前を助けることの方が……」

突然、ダダダダダッと、弾けるような音がして、ジェイはあすかをとっさにしゃがませた。

< 154 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop