ウソ夫婦

「モルジブは?」
ジェイが提案した。

「モルジブ? 素敵」
あすかはうっとりする。透明な青い海。サンゴ礁の合間を縫って、ジェイと二人で泳ぐ。マンタにも会えるかも。

「だろ? お前の水着姿も見られるし」

み、水着!

あすかは現実に引き戻された。

「ビキニを着ろよ。なんならジェニファーに選んでもらえば……」

「モルジブ却下」
あすかの冷たい声が、ジェイの声を遮った。

「……なんでだよ?」
「モルジブも、タヒチも、フィジーも、なんならハワイだって、却下」

あすかは毅然とした態度で言った。

ヒドイ水着姿を、ジェイに見せるわけにいかない。百年の恋も冷めるってもんよ。

「I don't understand(わかんねー)」
「Do not use English(英語を使わないで)」
「なんでだよ」
「英語じゃジェイに勝てないから」
「日本語だって、お前は俺には勝てないと思うけどな」
「失礼なっ」

ジェイが首をすくめる仕草をする。

あすかはイラッとして、思わず接続を切ろうとした。

「おい、切るなって」
「だって腹たつもん」
「お前が理不尽なこと言うからだろ」
「ジェイはアメリカ人なのに『理不尽』っていう難しい言葉を使ったりするから嫌」

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