ウソ夫婦
「じゃあ、アレ着ろよ」
ジェイが、ひときわ目立つところに飾ってあるウェディングドレスを指差した。
「あれ?」
あすかは思わず自分の胸を手で押さえた。
胸元が大きく開いた、プリンセス系のドレス。
どうみても……胸が足りないんじゃ……。
「いいですよ」
プランナーはジェイに言われるがまま、ドレスを取ってくる。
「じゃあ、奥様はこちらの試着室へ」
あすかの意見を聞かず、さっさと試着室へと連れて行かれる。
ど、どうする?
広めの試着室に通されると「後ろのファスナーは私があげさせていただきますね」とにこやかに言われる。
そして無情にもカーテンが閉められた。
大きな鏡の前に一人。あすかは自分の胸と、壁に掛けられているドレスの胸を見比べる。
どう考えても、違いすぎる。
あすかはドレスの胸元をちょいっと引っ張って、中を覗く。もしかしたら、パッドが入ってるとか。
あすかはがっくりと肩を落とした。
期待は裏切られた。なんも入ってない。このドレスに、自前の胸を入れろと、そういうことね?
あすかは泣きたくなってきた。