ウソ夫婦

ホテルに到着すると、レセプションにスーツケースを預けて、そのまままっすぐ衣装室へ向かう。

「お待ちしていました」
紺色のスーツに身を固めた三十半ばの女性が深く頭を下げた。それからジェイを見て、ほのかに頬を染める。

「素敵な旦那様ですね」
担当プランナーの女性は、そう言って目を輝かせた。

衣装室には、スーツ、それから真っ白なドレスが、所狭しと吊ってあった。

「奥様からサイズを伺って、取り置きしているものがございますので、そちらを試着していただいて」
「はい」

ジェイは外向きの顔で、随分と愛想がいい。

「お前のドレスはどれ?」
ジェイが尋ねるので、あすかは姿見の横にかけてある、真っ白なドレスを指差した。ハイカラーのハイウェスト。修道女を連想させるような、清楚なデザインだ。

「着てみて」
ジェイが試着室へと入りながら言うので、「明日には見られるからいいじゃない」とあしらった。

「俺だけ今から着るのか?」
不服そうな顔をしながら、ダウンジャケットを脱ぐ。

「じゃあ、奥様は他のを試着されては?」
プランナーが言った。

「……でも、もう決めちゃったし」
あすかは怖気付いて、首を振った。

「いいんですよ。試着するだけですもの」
プランナーはにこやかにそう言った。

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