子犬物語。
 ぼくは今まで体験してきたことの一つ一つを思い出して、思い切り泣いた。
 突然やってきたママとの別れ。恐ろしかった嵐。野良犬の恐怖。そしていちごとの辛い別れ……。
 泣き続けている間、なぜか猫は黙ったまま側にいてくれた。ぼくなんて放ってどこかへ行ってしまうこともできたのに。ただ、そこにいてくれた。ぼくの鳴き声に迷惑そうな顔はしていたけれど。
 しゃくりあげるのも止まり、気持ちの高ぶっていたメロンも落ち着いてきた。

「大丈夫か……?」

 さっきとは違う、優しい眼差しが上からメロンを覗き込んでいた。メロンもその瞳を見つめ返し、こくんと頷く。
 このひと(猫)は言葉は乱暴だけれど、本当は優しいのかもしれない……。

「確かに今のお前は不幸かも知れない。けどな、未来は自分で作っていくものなんだ。お前の努力しだいでいくらでも変えることが出来る。過去は振り返るな。自分のこれから歩く未来に自信を持っていけ。お前ならさっきの野犬のようにはならないだろうよ。いいか、後から後悔することだけはするな。わかったな?」

「うん……!」

 ぼくはとても大切なことを教わった気がして強く頷いた。そしてその言葉を絶対に忘れないと心に誓う。

「じゃ、な。俺は行くぜ。元気に暮らせよ」

 さわやかな笑顔を最後に身をひるがえす。

「あ………」

 行っちゃうよ……ぼくを置いていってしまう! 今度こそ一人になっちゃうよ。なにもわからないところで、ぼく一人ぼっちに……。
 呆然とするメロンの視界から猫は少しずつ遠ざかっていく。
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