Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~

07 発熱!

 昼休みに携帯を見ると新着メール一件。相手は永瀬だった。メールの内容は「死ぬ。今夜うちに来い。絶対にこいよ」といった意味不明なものだった。死ぬから来い? 死に目に会いにこいってこと?
 今まであまり気にしなかったけど……

「……あいつ、俺様なとこあるんだよなー……」

 ますます、嫁になどなりたくないという思いが増した。命令されて生きる毎日なんてごめんだ。私は眼鏡をかけ胸に手をあて穏やかに微笑む韓流スターのような男性が好みだ。

 昼に届いた意味不明なメールからその後永瀬から連絡はなく、メールの真意がちょっぴり気になった私は会社帰りに通り道でもある永瀬の家に寄ってみた。
 インターホンを押して、しばらくして出てきた永瀬の姿に驚く。
 目にいつもの覇気はなく顔色は悪い。声も枯れてなにより機嫌がものすごく悪そうだ。一目見て体調が悪いのだろうということを理解した。そういえばこの間、いいのか悪いのか分からないようなタイミングでくしゃみをしていたような……

「おせぇよ……」
「ご、ごめん……って、なんで謝ってる!?」
「薬。食欲ないけど取り敢えずなんか腹に入れてから……」
「うん。風邪なら何か食べてさっさと薬飲んで寝たほうが……」
「だから。薬は?」
「……は?」

 永瀬の表情がみるみると険しい物に。

「なんだよ、おまえ。手ぶら!? 見舞いに手ぶらでくる奴がいるかよ」
「か、風邪引いてるなんて知らなかったし……」
「文面から察しろよ」
「無茶言うな……!」

 口論の途中で永瀬がふらりと力なく壁にもたれかかる。

「だ、大丈夫!?」
「薬、あとなんか食いもんとデザートな」
「はぁ!?」
「早くしろよ」

 目の前でパタリとしまる扉。
 体調が悪くてイライラしているのは分かる。だからって今の態度ってどうなの!? あれが人に物を頼む態度か!?
 誰が買いに行くか……!! 死ぬ。とかメールで送ってきたけど本当にそのまま死んでしまえばいい……!

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