Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~


「ありがとうございました~」

 近所のコンビニで目的のものを素早く調達して永瀬の自宅へと向かう。
 困った時はお互い様だ。これまでずっとそうだった。私も風邪を引いたときに永瀬に面倒を見てもらったことがある。だから……致し方ない。
 永瀬の自宅へと到着すると鍵は開いていて勝手に扉を開けて中へと入る。ベッドの上で布団もかぶらず横になっている永瀬を見てため息を漏らす。

「お、早いじゃん」
「ちゃんと寝てなよ。風邪引いてるんでしょ? 酷くなるよ」
「薬飲んだら寝るよ」
「今日は会社は?」
「有休」

 買ってきたコンビニの袋を手渡すとガサガサと音を立てて中身をベッドの上で広げた。

「俺シュークリーム苦手なんだけどー」
「文句を言うなら食べなくていい」
「エクレアは食べられる。覚えとけよ」
「なにが違うの!? チョコついただけじゃん!」
「全然違うだろ」

 よく分からない嗜好だ。別にいいけど。理解する気も覚える気もない。
 永瀬は適当に色々買ってきた食品から菓子パンを選ぶと封を開けた。でも、本当に食欲がないらしく半分も食べないで置いた。

「……寝ようかな」

 そして薬を飲むと大人しく横になった。
 仰向けに険しい表情で目を閉じる永瀬の顔が赤い。熱があるらしい。私は冷凍庫から保冷剤を探して、タオルでくるんで永瀬の顔にあてた。

「はい」
「気が効くな」
「汗出てるね。汗かけば熱も下がるよ」
「んー……」

 そのまま、目を閉じたまま口も閉ざした。しばらくすると健やかな寝息をたて出す。眠ったらしい。
 寝顔なんか今までに何度も見てきたけど、寝顔は普段の憎たらしい表情が嘘のように幼く見え可愛いらしさも垣間見える。

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