Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~


「……い、おい、起きろって」

 目を開くと窓から差し込む明るい光が目に入った。
 えっ、嘘!?
 私は勢いよく顔を上げた。

「今何時!?」
「朝の5時だよ」

 永瀬のベッドに突っ伏した状態で朝まで眠ってしまったらしい。

「あー、身体中べたべたする。気持ち悪ー……」
「……あれ?」

 起き上がって目をこすりながら不満を漏らす永瀬の顔色が、昨日の比べたらだいぶいいように見える。むしろ、いつも通りの永瀬だ。

「熱は?」
「計ってないけど下がったかな。気分いいし」
「そっか、よかったね……」

 ベッドから立ち上がる永瀬を見上げる。体調はいいようだ。

「会社は?」
「行けるよ」

 朝5時か。まだこれから家に帰って準備をする時間は十分ある。
 永瀬の家で寝てしまったのは予定外だったけど、早い時間に起きれてよかった。

「俺シャワー浴びるけどおまえどうする?」
「え!?」
「だって。昨日風呂入ってないだろ? 先使えば?」
「い、一度家に帰るからいい!!」

 な、なに言ってんのかな……!?
 先にシャワーなんか浴びたら色々と、こう、使用後に処理するものも……って。
 永瀬が、ウチのシャワーを使ったことが過去に何度かあった気がする。焦るのは、今更、なのかな……。ていうかよく今まで平気だったよね!? ……って、あれ!? 今は平気じゃなくなっちゃったの!?
 一人でパニックに陥る私を無視して、永瀬は「じゃ、俺浴びてくる」と言って部屋の入口へ向かう。そして部屋の外に出ると振り返った。

「時間、まだいいよな?」
「はい?」
「冷蔵庫に実家から送られてきた食材とか色々入ってるから朝めしお願い」
「な、なんでそこまで!?」
「二人分な」
「私の分も!? いいよ、帰……」
「よろしくー」

 私の言葉を無視してパタリと閉まるドアを呆然と見つめる。
 そういえば……こんな朝も始めてではない。……あれ。私、思ったよりも以前から、永瀬の言いなりになっていることが多かったのかもしれない……。

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