メシトモ!
 この短時間で知った真実。それは驚きの連続だった。そんな人が私を好きだと言った。キスをしてくれた。私も好きだけど、それ以上に突然不安が押し寄せてきた。

「そうだね。こんなにいろいろなことを一気に言われても困るよね」

 佐々木さんは優しく私を抱きしめてくれた。そして落ち着かせるように、ゆっくり頭を撫でている。

「僕はこれからも叔父の会社でも働くし、"Maria Afternoon"も続ける。叔父の会社を継ぐということはないから。叔父の後継者は叔父の長男。つまり僕の従兄。それに田崎さんも叔父も、僕は経営には向かない性格だっていうのはわかっているし。僕は一生デザイナーでいるつもり」

「うん」

「それに僕の持論なんだけど、デザイナーは表には出なくていいと思っているんだ。表に出るべきなのは作り上げたものだけ。それには自分の心血を注いで作っているものだから。デザイナーがそばにいなくてもいいんだ」

 耳の近くで聞こえる佐々木さんの声は、いつも聞いている声なのに、いつもよりも甘く聞こえた。

「もし、僕が"Maria Afternoon"のデザイナーだって、最初から知っていたらどうした?」

「たぶん、仕事以外で接点を持つようなことはしないかな」
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