メシトモ!
 涼太は佐々木さんの顔をじっと見ながら話を聞いていた。涼太は自分から進んで人前に出るようなタイプではない。ただ委員や部長といった立場で、文化祭や体育祭を仕切ることはする。責任感が強いためきっちりこなす。

「涼太君、学生時代にはいろいろなことを体験した方がいい。興味があることはもちろんのことだけれど、興味がないことも、敢えてやってみるのもいいよ。それでやっぱり向いていないと確信を持つことも大事だし。今日の経験が別の形で役立つこともきっとあるから」

 涼太は少し目線を落として、考えているようだった。そして佐々木さんに視線を合わせた。この瞬間、涼太がなんと答えるか想像ができた。

「わかりました。そのモデルさんの代役お受けします。その代り、一つ僕のお願いを聞いてください」

「ちょっと、涼太」

 さすがにこれは予想外だった。止めようとすると、佐々木さんは私の顔を見て「大丈夫ですから」と言った。私は大人しく黙った。

「あの、僕は将来、建築の道に進もうと思っているんです。大学も建築学部に通っています。お時間のあるときで構いません。デザインに関しての話を聞きたいんです。服と建物では違うかもしれませんが、デザインをどうやって生み出すのか、自分のアイディアを増やしていくコツとかを聞きたいです。今、建築関係に就職した先輩方にもいろいろ話を聞いているんですけど、全く違ったジャンルで仕事をするデザイナーさんの話も聞いてみたいんです。でも、そういう伝手がなくて。お願いします」

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