メシトモ!
先攻が私で赤い駒、後攻が佐々木さんで緑の駒。もう十年以上はやっていないゲームであっても、始めると細かなルールがするっと頭の中に浮かぶ。
工事現場やガソリンスタンドに置いてあるコーンをものすごく小さくしたような形の駒を、指先でつまみながら地道に動かしていく。
ボードゲームというのは、相手の手を眺める時間が必然的に訪れる。この手が女の人生で最高の一瞬を彩るドレスを作るんだな、と思った。少し大きめの掌に細く長い指、その指先は流れるようになめらかに動く。
「杉山さん、真剣だね。もしかして、負けず嫌い?」
「そんなことないですよ」
この言葉に続く正しい文章は「あなたの手を凝視していました。ゲームの勝敗はどうでもいいです」しかない。そんなことは絶対に口に出すことはできない。
「今はこういうゲームで絶対に勝とうって気持ちはないです。でも子供のころは、涼太と遊ぶと勝ち負けでけんかになっていましたね。駒を投げ合って、最後は母に叱られるんです。二人揃ってふくれっ面で片付けをして、必ず駒が一つか、二つ見つからないんですよ。でも次の日には、必ず母がその駒を見つけてくれるんです。そんな母を魔法使いだって思ってました」
工事現場やガソリンスタンドに置いてあるコーンをものすごく小さくしたような形の駒を、指先でつまみながら地道に動かしていく。
ボードゲームというのは、相手の手を眺める時間が必然的に訪れる。この手が女の人生で最高の一瞬を彩るドレスを作るんだな、と思った。少し大きめの掌に細く長い指、その指先は流れるようになめらかに動く。
「杉山さん、真剣だね。もしかして、負けず嫌い?」
「そんなことないですよ」
この言葉に続く正しい文章は「あなたの手を凝視していました。ゲームの勝敗はどうでもいいです」しかない。そんなことは絶対に口に出すことはできない。
「今はこういうゲームで絶対に勝とうって気持ちはないです。でも子供のころは、涼太と遊ぶと勝ち負けでけんかになっていましたね。駒を投げ合って、最後は母に叱られるんです。二人揃ってふくれっ面で片付けをして、必ず駒が一つか、二つ見つからないんですよ。でも次の日には、必ず母がその駒を見つけてくれるんです。そんな母を魔法使いだって思ってました」