メシトモ!
「頭の中をデザイン以外のもので埋め尽くしたいんだ。職場はもちろんだけど、自分の部屋にも、デザインの資料やサンプルで溢れているから、そういうふうにはできないんだ。ここだと、美味しいご飯とゲームしかないからね。気分転換に知恵の輪や将棋の手を考えたりするんだ。そんなことをしているうちに、なにかが降ってくる。それをとにかく描いて、一晩寝かすんだ」

「なんで寝かすんですか?」

「学生のころになかった? 夜な夜な書いたラブレターが朝になると鳥肌が立つくらい寒く思うってやつ」

 ここでありますと言いたいところだが私にはない。私は全て直球でいく主義だから、ラブレターや甘いメールを書いたことも送ったこともない。

 ただ、そんな類の話はよく聞くので「よくある話ですよね」と返した。

「デザインも一緒。勢いだけで作ったものなんて、あとで見ると荒削りでびっくりするんだ。だから、次の日に洗練されたものに変化させる。ここへ来たときの僕の一連の作業はこんな感じだよ」

「それ、涼太にも話してあげてくれませんか?」

「ああ、そのつもりだよ。生みの苦しみをこれでもかって言うぐらい伝えるつもりだから」

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