小さな恋の物語 *短編集*
 ジッと先生を見つめていると先生は困ったように話し始めた。




「去年、初めて佐藤を見た時、1人だけ大人びているなって思った。それが第一印象」



 ……確かにそうだ。



 私は人と関わることが苦手で、小さい頃から「雅ちゃんは大人びてるね」って言われることが多かった。



「でも、授業を持ってて全然大人びてないって思った。……誰よりも努力して、先生の期待に応えようと必死な佐藤のことがだんだん気になっていった」




 …………どうしよう……。



 先生の真剣な想いに胸が苦しくなる。



 無意識に俯いていたらしい私を見て先生は苦笑いを浮かべていた。



「ごめんな、いきなりこんなこと言って。ただでさえ受験間近で大変なのに」
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