ラヴィアン王国物語
 ラティーク王子だ。ラティークはアイラを引き戻した。腕に転がったアイラに、いつものだらしない雰囲気など微塵も感じさせない真摯な眼。優しくアイラに微笑んだ。

「良かった。シハーヴが教えてくれなかったら、きみもあの扉の向こうにやられる」

 ——見つかった。風の精霊を小さく睨んで、アイラは素性を明かした。

「水の者たちをこんな地下に閉じ込めて! ヴィーリビアの王女が許さないんだから! 秘宝と、あたしの親友を返しなさい!」
「親友? 秘宝だって? ヴィーリビアの王女……まさか」

 アイラはしまった、と口を押さえたが、ラティークはアイラの腕を引いた。
 再びラティークの胸板にぶつかって、アイラはムスっと顔を上げた。

「なに? ハレムの続きでもやる気? また張り飛ばすよ」





「静かに。何者かが階段を降りてくる」

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