ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
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 窓から差し込む朝日が眩しくて目を開けると、昨日の夜に見た風景とは違うものが広がっていた。

「…こんなにたくさんの人…!」
「お目覚めですか、ジア様。」
「おはよう!」
「おはようございます。よく眠れましたか?」
「ええ。そして昨日とは全然違うのね。こんなにたくさんの人がいたなんて…!」
「はい。これからみんなで朝食をとり、その後仕事に移ります。」
「みんなで!?」
「仕事別に、ですけどね。もちろん調理をする人もいるので厳密にいえば全員が一斉にというわけではありません。ですが、一人で食事をすることを、ここでは好みません。」
「じゃあ、あたしもどこかに入って食べてもいいの?」
「え?」
「一人で食事は嫌だもの。そうと決まれば着替えるわ。動きやすいものはあるかしら?」
「ドレスなどではなく?」
「ええ。ドレスなんて、本当はとても苦手なの。」

 ジアは照れながらも笑った。

「承知いたしました。では、こちらのものはいかがですか?」

 差し出されたのはベージュのショートパンツに黒のレギンス、黒のタートルネックだった。

「動きやすそう!ありがとう、シラ!」
「いえ…。」
「着替えたらまた呼ぶわね。朝食、楽しみだわ。」

 日頃定期的に着せられるドレスなんかよりもこっちのほうがずっと落ち着く。そんなことを考えながらジアは袖を通していく。あっという間に着替え終わり、左腰を見やる。

(…はぁ、ここに剣を差していたのは一体いつが最後って感じよね…。)

 きっと今の自分が剣を振り回していたなんてことはここにいる誰にもわからないだろう。掌にも無数の傷、マメができていたものだ。そんなものが一切なくなり、そしてミアの治癒の魔法の成果もあり、戦いの場に身を置いていたとは思えないほど傷一つない身体になってしまった。
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