ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「着いたで。」

 そこは、アスピリオの中央部が一望できる小山の上だった。ジアが降りたのを確認すると、またしても一瞬でランは人型に戻った。

「…何度見てもすごいわね。あの大きさから、この大きさになるなんて。」
「龍の血がなせる業、や。姫さん、木登りはできるんか?」
「ナメないでください。あたしを誰だと思ってるの?」
「箱入りの姫さんやないってことはわかっとるで。」
「上等よ。」

 ジアはすっと軽い身のこなしで木に登る。

「この辺でいいの?」
「上等上等。さすがやな。」

 ジアは太めの枝の上に腰を下ろした。すぐにランも登ってきて、ジアの隣に座った。

「ええところやろ、アスピリオは。」
「…そうね。本当に、そう思う。連れてきてもらえて、よかった。」
「ほぉ。誘拐されとんのに、か。」
「まぁ、あの状況では誘拐だし、強引すぎるけれど…だから、手はずを踏んでくれれば、誘拐なんてことされなくても来たのになって、そうは思ってる。」
「え?」

 ランは目を丸くしてジアを見つめた。

「それを訊きにきたのよ、ラン。どうしてあたしを誘拐したの?あなたの目的は何?」
「ええ瞳やな、本当に。」
「え?」

 ランの右手が、ジアの髪の先をすいていく。

「オレの目的なんて知って、どうするつもりや?」
「帰る前にそれを知っておかないと気分がすっきりしないからよ。」
「帰る?」
「ええ。あたしは帰る。あたしの居場所はここじゃない。ここに学び、ハルアトスに生かさなくちゃいけない。」

 ジアの黄金の瞳が、星の光を受けて煌めく。
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