ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「ラン。」
「なんや?」
「…おかげで、迷いが消えたと思う。ジアを泣かせたことはしばらく根にもつけど。」
「根にもつんや。おもろいな。」
「はっきりした。自分の気持ちが。やっぱりジアの横を譲れない。ジアが目指す国を作るための、一番の支えでありたい。そのための努力は、惜しまない。だから…。」

 キースは真っすぐに、その黄緑色の瞳を見つめた。そして頭を下げる。

「ありがとう。」

 ランは目を丸くした。そして盛大に笑う。

「はははー!やーっぱお前らみんなヘンなんやなぁー。ふつー敵に頭下げへんで。」
「ランは、敵じゃない。」
「はぁ?」
「ランだけじゃないかもしれないけれど、今日ここを歩いて、人と話をして、生き方を見て、ここを作ってきた人たちを悪いとは思えなかった。むしろ、確かに血の種類は違えども、人間とそうじゃないものの血が混ざった者として、ここは希望に見えた。ジアが俺に見せようとしている景色はきっとここみたいな景色なんだろうなって思ったら、やっぱりここをまとめる中心であるランを敵だとは思えない。」
「…なーるほどなぁ、オレが勝てへんわけやなぁ。」
「え?」

 ランが広場を見つめている。

「信頼の度合いが、全然ちゃうやん。それに、姫さんはお前のことやないと顔色一つ変えへんで。」
「そんなことないよ。ジアの表情はころころ変わって…。」
「それはな、特権や。」
「特権?」
「新しい時代を創る王の隣を許された、お前だけの特権っちゅーやつや。」
「だと、嬉しいけど。」
「はぁー妬けるなぁ、ちゅーか、羨ましいんやろな、単純に。」
「妬いたのはこっちだよ…本当。あれはしばらくじゃなくて、結構許せない。」
「あんなん思い出や思い出。ええやんか、これからどんだけでもできるやん。」
「…それは、そうだけど。」
「っかー!腹立つなぁ、その勝ち組の発言。だけどな、キース。」
「ん?」
「あの日に出会った顔よりな、今の顔の方がオレは気に入っとるで。お前のこと。」
「はは、ありがとう。」

 全ての終わりに、こんな出会いが待っていて、今自分がこうして笑っていられること。不思議だけれど、嫌じゃないこの感覚。むず痒いけれど、忘れない記憶になる。
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