遠すぎる君
俺は秋にはレギュラーになった。
控え選手の準レギュラーだが。

3年が引退したとはいえ、1年から次のレギュラーが排出されるのは稀だ。

俺は一歩のしあがったんだ。

レギュラーと準レギュラーの練習や扱いはほぼ同じ。
監督に目をかけてもらえ、トレーナーも付く。
マネージャーも世話してくれる。

ただ、マネージャーも先輩ばかりなので気は使うが。

そのマネージャーのうちの一人、2年の佐藤奈々先輩は1年の俺を可愛がっていろいろと世話してくれる。

後輩レギュラーが珍しいのか、先輩レギュラーの輪に馴染めない俺を気遣ってか。

どちらにしても有り難かった。

そんな奈々先輩にはよく買い出しのお供を仰せつかる。


今日もそんな買い出し後に来た。
用事が終わって学校へ戻る途中、
「かわいい~!ちょっとだけ」と言って
俺の腕を引っ張り、女子しか入れない雑貨屋に押し込まれてしまった。 

こんなとこ!入ったことねーのに……
あ、いや、一回だけあったな。しおりのネックレス買いに……

しかし、居たたまれなくてとりあえず外に出ようとすると彼女がこっちを見ていた。

しおり

心臓が早鐘を鳴らす。 

切った髪も少し伸びて、付き合い始めた頃のよう。

しおりに釘付けになっていて、腕に添えられた奈々先輩の手にも気付かない。

何か話を……
こんなことなら偶然会ったときのシミュレーションでもしとくんだったと後で悔いた。

落ち着け…落ち着け、俺!

やっと出てきた言葉は「久し振りだな……」

そうだよな。それしか言うことないよな……

先輩もいるしどうすることもできなくて黙っていると、しおりは店内を何気無く一周して出ていってしまった。

その閉まったドアを見て、やっと足が動く。

「高坂くん?」先輩の声に振り返りもせず外に出た。

しおりの家の方に走った。




< 66 / 136 >

この作品をシェア

pagetop