冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
痕を付けられた首を擦りながら、エレベーターを待つ亮介の横に並ぶ。


「もう!」

涼しい顔をして鼻歌でも歌いそうな亮介を睨む間もなく最上階から降りて来たエレベーターが止まった。中にいたのは予想通り姉夫婦とその愛娘。



「「おはよう」」

相変わらず隆之介さんの低く魅力的な声と、明るくハキハキした響さんの声が重なる。


「おはようございます。隆之介さん、響さん、お式では色々とありがとうございました」

昨日の式で隆之介さんには演出などの全般を、響さんには衣装など私の身の回りのことをすべて引き受けてくれた。


「素敵なお式だったね。私達もあんなに盛り上がって楽しかった。ねっ!」

そう言って隆之介さんに視線を向け、すぐに隆之介さんが抱っこしている二人の愛娘に視線を移す。


「きゃ〜、桜ちゃんおはよう!」


まだ1歳になったばかりの桜ちゃんは愛嬌のあるぱっちりお目目の美人さん。
私にとっても姪っ子になる訳で、やっぱり可愛くて仕方が無い。


「桜、おはようは?」

きゃっきゃと言いながら、満面の笑みを振りまく桜ちゃんを目尻を下げ愛でる隆之介さんは更に男前度をアップした気がする。
その横で響さんが鋭い一言をつぶやく。


「亮介、新婚旅行に行く前から夏希ちゃんを独り占めしたくて仕方ないのね」

とニヤケてる。


「あ…」

桜ちゃんに気を取られて油断していた。
響さんの視線は私の首元を見ている。
いつもならそんな響さんの言葉で不機嫌な顔をする亮介が、今日に限って笑顔で私を見ている。


「やっと二人の時間が持てるんだから放っとけ!」

いつの間にか私の腰に手を添えて悪びれた様子もない。

「亮介、悪かったな。式の前に激務だったろう?」



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