冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
早瀬デザイン事務所は案件が数社重なって、かなりの激務を強いられていた時期だった。
それはまだ続いているけれど、2、3日は何とかなるまでは片付けて来たらしい。
「すみません、忙しい時期にお休みを頂いて」
さっき部屋で拗ねていた亮介はどこへ行ったのだろうか?
「こっちこそ、気を遣って貰って申し訳ない。夏希さん、すまない」
新婚旅行先を熱海にしたのは、万が一を考えて、すぐに戻って来られる場所だから…
「いえ、お休みを頂けるだけでも」
「その代わり」
亮介が私の腰をより一層自分に引き寄せて
「時期を見て俺らも改めて新婚旅行に行かせて下さい。長期休暇をお願いします」
と顎をグッと持ち上げた。
虚勢を張った犬っぽく見えるのは気のせいだろうか?
「ああ、わかった」
亮介の訴えに、口角を右だけ上げて笑いながら隆之介さんは答えてくれた。
「もう、男だけで何勝手に決めてんのよ、夏希ちゃんだって仕事してるのよ」
響さんは家庭と両立して仕事をしている女性を素敵だと普段から話している。
「とにかく今回は短いプチハネムーンですので、"絶対に" 連絡はしないで下さい!わかった?」
隆之介さんと視線を合わせて話していた亮介が「わかった?」だけを響さんに向かって言う。
「亮介!」
あからさまな言葉を遮るように私が止めると「わかったわよ」と響さんが答えた。