冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!

話に入ることもできず、窓の外をぼんやりと見ていると、しばらくして少し高台にあるその旅館に着いた。
格式高い門をくぐったかと思ったら、老舗と言われているだけある日本家屋の古き良き佇まいが、どこか懐かしく、それでいて贅沢な気分にさせてくれる。


「わぁ…素敵」


「それは良かった。到着しましたよ」

ニコニコしながら遠藤さんが車を停車させると、自動的にドアが開いた。
開いたドアの方を見ると、白シャツにネクタイ姿の男性が立っていた。白い手袋をした手が車のドアに添えてあり、私が降りるのを待っている。

こんなことに慣れていない私が戸惑っていると、先に車から降りていた亮介がドアを抑えてくれていた男性と入れ替わり、私の腕をそっと引き上げ、車から下ろしてくれた。


「ありがとう…なんか、慣れてなくて」



「この数日は贅沢しよう。心も体も」

体もと含みを持たせた言い方をしながら、ニヤッと笑う亮介は悪い顔になっている。
人に聞かれては恥ずかしい。


「体って…変な言い方しないでよ」

小声で抵抗する。


「なにが?疲れを癒すため贅沢をしようって意味だよ。あ、夏希…やらしいこと考えたでしょ?」

悪い顔が更に悪くなって私の顔を覗きこむ。


「ち、違うわよ!」

亮介を手で押しのけようとしたら、バランスを崩して後ろへ傾いた。


「あぶない」
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