冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
チェックインの手続きをする為に、フロントへと向かおうとしていたら、桃子さんと将司さんは「じゃ、後で」と言って車で去って行った。素っ気ない態度ばかりとっていた桃子さんだったのに遠藤さんの隣にいることが自然でお似合いだった。
チェックインなどはすべて亮介がやってくれて、私はただ後を付いていくだけだ。
年下っていつも気にしている亮介だけど、本当は優柔不断な私をちゃんと引っ張って行ってくれている。
案内してくれる仲居さんの後ろを付いて行きながら、あまりにも豪華で素敵な旅館内をキョロキョロしてしまう。かなり長い距離を歩いても、なかなか部屋に着かない。
一度、外に出る形になり渡り廊下も渡った。
ロビーから歩いて7、8分は経っただろうか。
格子の扉を開けて竹林の小道を抜けると小さな離れがあった。
「どうぞ」
仲居さんが扉を開けて部屋に入ると、老舗の外観とは別世界の和と洋が融合したスタイリッシュな室内だった。
「わ!素敵な部屋!!!!」
畳の和室に大きなローテーブルがどんと真ん中に鎮座していても、まだ余裕がある部屋。
その先には開放的な大きな窓、その窓を開けるとバルコニーに出られる。
大人げなく、パタパタと部屋を小走りする。
バルコニーに出て見ると、一角にはプライベートの露天風呂。
そこから一望できる海。
バルコニーが繋がっていたもうひとつの部屋を窓から覗くと、セミダブルのベッドがふたつ並んでいる寝室が見える。
「ねぇ、ねぇ、こっちの部屋にベッドがある〜」
中からどうやって寝室に入るのか、室内に入って寝室に繋がるであろう扉を開けると、良い香りがする室内には窓越しで見るよりもリアルにベッドが視界に入って来た。
それを見た途端、急に恥ずかしくなって動きが止まってしまった。
「夏希?」
「・・・」
「なに想像してんの?」
ベッドを前に固まってる私を後ろから亮介が抱き寄せ、そっと私の髪にキスをする。
「ちょ、まだ・・・仲居さんがいる・・・」
「あ、そうだね」
少し後ろを振り返って見上げた亮介の顔は、確信犯なくせに、惚けた答え方をしながら優しく笑っている。
「こちらのお部屋は当館で一番広いお部屋なんですよ〜。お茶が入りましたので、よろしかったらどうぞ」
仲居さんが見えないところから程よい距離を置きながら声をかけてくれた。
亮介からパッと離れて何事もなかったように仲居さんにお礼を言ってお茶をすすった。
きっと甘い雰囲気になっていたなんてバレバレだろう。