冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!


夕食までは時間があるからと部屋で一息ついていると、私はいつの間にか眠ってしまった。
西に傾いた陽が差す部屋で目を覚ますと亮介の姿が見当たらない。


「亮介?」


部屋にもバルコニーにもいない。


「どこに行ったんだろう?」


亮介のスマホに掛けてみても電話に出ない。
着信音が部屋で聞こえないと言うことはスマホを持って部屋を出たのだろう。


「散歩かな?起してくれたら良かったのに」


亮介を探しに行こうと部屋の外に出た。
本館から静かな中庭を抜けて、しばらく歩いた所に立てられていた離れというだけあって、他のお客さんとは出くわすことがない。

両サイドを程よい高さの竹が生い茂っている小道を本館に向かって歩き出す。
少し歩いたところで誰かの話し声が聞こえて来た。
姿は見えないけれど、竹林の中から聞こえて来るのは間違いない。


「まだそんなこと言ってんの?!」


大きい音にビクっとした。
亮介の声だ。
けれど、こんな風に怒鳴っている亮介は私は知らない。



「だって!」

次に聞こえて来たのは間違いなく桃子さんのかわいらしい声。


「だってとか…もう子どもじゃないんだし、いい加減にしろよ」

何がどうなってこんな会話になっているんだろう?



「亮ちゃんだって分かってるんでしょ?私の気持ち」

えっ?桃子さんの気持ち?



「あのな…もう俺は結婚したんだし、こういうの迷惑なんだけど」


私には見せたことのない冷たい口調に怯んでしまう。
やはり過去に桃子さんと何かあったに違いない。



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