冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
「夏希さん?」
「熊…じゃない…」
「ん?熊?熊なんてこの辺は出ないよ。どうしたの?こんなところで寝ていて」
横たわったままの私を遠藤さんは上から見下ろしているという妙な体制で会話をしている。
「…すみません。道に迷って…」
上半身を起こしながら、急に恥ずかしさがこみ上げて来て照れ笑いしてみる。
「道に迷ったからって寝そべってたの?」
「それは、そのぉ…足音が熊かと思って死んだフリを」
「熊?僕を熊と間違えたの?」
遠藤さんは一瞬きょとんとしてから「ハハハハハ!それは面白い」と豪快に大笑いした。
「ごめんね、驚かせて。でも熊に間違えられたのなんて初めてだな」
そう言いながら、私に手を差し出した。
「でも…そろそろ帰らないと危ないよ。あっちの雲見て」
さっきまで夕焼けが見えていた西の空に、怪しげな黒い雲が現れていた。
「変な雲があるから雨が降って来ちゃうよ。立てる?」
遠藤さんの手を取る事が自然な形になり、そっと手を伸ばすとグッと引き寄せてくれた。