冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!


「先輩、やり過ぎ」

唸るような低い声が密着した背中に響く。


「ハハハ」

また豪快に笑って、今までの遠藤さんと雰囲気が一変した。


「夏希も…無防備すぎるだろ!隙があるから良いようにされるんだよ」

そう言いながら、私の濡れたシャツを見て「はぁ…」と大きくため息をつく。
すぐに羽織っていたシャツを脱いで私を包んだ。


「ごめん」

消え入るような声でつぶやいた私に亮介の低い声が響く。


「なにしてんの?こんなところで」


「…えっと、あの…」

亮介と桃子さんの話を聞いて、逃げ出したなんて言える訳も無く。
あ、でも、これから先、長い時間を亮介と共に生きていくんだから、言いたいことをちゃんと言わなくっちゃと思い直す。少しの間を置いて正直に話した。


「あの…さっき桃子さんと話しているのを聞いちゃって。聞いちゃいけない話のような気がして」


「はぁ…また早とちりして逃げたんでしょ」


「あ…うん」


「どうしてその時に声を掛けないの?俺、そんなに信用されてないのかな」


「そういうんじゃない!ただ…桃子さんと話す亮介は私の知らない亮介で…なんか…違う人みたいに見えて」


「見えて?」


「ちょっと淋しかった」


「ふ〜ん、それで?」

そう言いながら濡れた私の髪の毛をそっと撫でる。
もう苛立は消えて優しい目だ。


「ヤキモチも」


「ん?」


聞こえているくせに私をからかう。


「もう!」

亮介を睨みながら胸を叩く。



「ははは…やっぱり俺の奥さんは可愛いな」

< 137 / 145 >

この作品をシェア

pagetop