冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
「バッカじゃないの!」
私達に向かって桃子さんが小さく叫んでいた。
あ、桃子さんも一緒に来ていたんだ。
遠藤さんもいたこと忘れてた。
「いいだろ、新婚なんだから!っつーかさ、もう桃も素直になれば」
亮介が見せつけるように私をギュッと抱きしめる。
「素直って何のことよ」
プイっと顔を背けながら桃子さんがふて腐れる。
「桃はずっと昔から先輩のことが大好きなくせに、そう言う態度は良くないってこと」
桃子さんの顔が急に赤くなる。
「桃子、亮介もそう言ってることだし、そろそろ観念して素直に俺のとこに来たら?」
至って冷静な遠藤さんが穏やかに言葉を紡ぐと
「そういうのが嫌だって言ってるの!小さい頃から、もう将司くんのお嫁さんになることが決まってるからって当たり前のように。お父さんやお母さんに言われたからお嫁にもらうみたいな…将司くんが仕方なく私と結婚するみたいで」
「誰が仕方なく結婚するなんて言った?」
遠藤さんの声は優しいけれど力強かった。
「みんな言ってる。将司くんちが家の旅館と取引がある酒屋さんだから、将司くんはその取引が切られないように中津川旅館のひとり娘を嫁にもらうんだって」
さっきまでギャンギャンと騒いでいた桃子さんの大きな目から涙がポロポロとこぼれて来た。
「そんなのみんながお前をからかってるだけだろ。それを鵜呑みにしてたのか?」
「それだけじゃない…将司くん、私のことを好きなんて一度も言ったことがないじゃない」