登山ガール
「へぇ、結構近いね。俺は大宮だから。浦和ぐらいなら歩いても行けるしね。」

本当に狭かった~。
大宮にはよく行くし。映画を観るなら新都心だし。
最寄り駅から3駅行ったら大宮だし。

「おっ、広い場所に出たね。ベンチもあるし休憩しようか。」

「はい。」

男坂と女坂の合流地点が檜平という空き地?みたいになっていた。

雄介さんが腰掛けた隣に私も座る。

大丈夫だよね。私、汗臭くないよね。もう少し離れた方がいいかな?

「いたっ!」

足に力を入れたら、少しの痛みがはしった。

「あぁ、結構筋肉が硬くなってるね。そういうのは優しく揉んでやると治るよ。ほら、足を出して。」

私は雄介さんに言われるがままに足を出した。

雄介さんが私の足を優しく揉む。最初は少し痛かったが、だんだんと痛みが消え、気持ちよくなっていく。

10分ぐらいだろうか、足の硬さは取れ痛みも感じなくなった。

「ありがとうございます。すごく楽になりました。」

「いや、俺の方こそゴメン。許可無く足を触ったりして。今思えば、セクハラで訴えられてもおかしくないレベルだった。」

そうかな?足を触っただけでセクハラ?
うん。課長とかに触られたらセクハラで訴えるかもw。

「大丈夫です。訴えたりしません。私の彼氏になる人を犯罪者にしたくありませんし。」

「ありがとう。俺のことを真剣に考えてくれて。」

「っ!そろそろ行きましょうか。駅で由美ちゃんたちが待っているので。待たせすぎても怒られちゃいますから。」

顔を紅く染めている事を知られたくないため、ベンチから立ち上がり、歩き出す。

もう。雄介さんったら、和んでたところにいきなりぶっこんでくるんだから。対処に困るっつ~の。

無言で下山している私の後ろでニヤニヤと雄介さんが付いてくる。

なぁ~、なんであんな事を言っちゃったんだろう。私が雄介さんの事を彼氏にしたいみたいじゃない。実際に雄介さんみたいな優しい人が彼氏だったら嬉しいけど、雄介さんとは今日会ったばっかだし。

「花菜ちゃん。」

「ひゃい。にゃんですか?」

うっ、声が裏返ったうえに噛んじゃった。

「ほら、この表札に藤沢と立河原って書いてあるでしょ。どっちに行く?」

あっ、本当だ。全く気づかなかった。沢ってことは登るときに見てきたようなのだよね。綺麗だったし、もう一回みたいなぁ。

←立河原
↓藤沢
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