イジワル上司と秘密恋愛


明るい自分は嫌いじゃない。けれど、素直に落ち込んでいる姿も見せられない自分が馬鹿みたいだと呆れもする。


「……悔しくないし。全然悔しくなんかないし……」

ブレストが終わってすぐに入った昼休み。

私は人が滅多に立ち寄らない非常階段の踊り場に、ひとりで蹲っていた。

辛い事や泣きたい事があった時にはいつもここに来てしまう。幸い建物の裏は公園の雑木林になっていて、外部に設置されている非常階段は人目に付かないところにある。ひとりになりたい時にはうってつけの場所だ。

だから私は辺りを気にすることなくグスグスと鼻をすすり、さっきの柳さんの言葉をどうにか忘れようといじましい努力をしていた。

——その時。

「春澤?」

突然名前を呼びかけられて、私は驚いて顔を上げる。

「か、課長……」

振り返った先にはいつからそこにいたのか、綾部課長がドアの前に立っていて、驚きと戸惑いを含んだ表情を浮かべていた。

 
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