イジワル上司と秘密恋愛
「……泣いてるのか?」
僅かに躊躇いがちに尋ねられた言葉に、私はハッとして目元を拭う。
ゴシゴシと乱暴に手で目を擦りながら立ち上がり、無理矢理に口角を上げて笑って見せた。
「なんか朝からコンタクトの調子悪くって。あー目が痛い」
泣き顔を見られてしまったと云うのに、それでも湿っぽいと思われるのが嫌で、白々しい言い訳が口を突く。なのに、まっすぐ見つめてくる綾部さんの眼差しはそんな私を許してくれない。
「馬鹿だな。落ち込んでるなら無理に笑わなくていい。咎めもしないし誰にも言ったりしない」
「何言ってるんですか、もう。落ち込んでませんってば」
気遣ってくれてる綾部さんの言葉が嬉しいのに、それでも虚勢が口を突いてしまう。
些細な事で落ち込む暗くて面倒な部下だと思われたくない。明るい女の子でいたい、特に綾部さんの前では。
だから、例え白々しい嘘だと分かっていても、このまま一緒に笑い飛ばして欲しかったのに。