イジワル上司と秘密恋愛
「柳の言った事なら気にするな。春澤は今のままでいい、臆さずにどんどんアイディアを出せ」
泣いていた理由まで的確に当てて慰めてしまう綾部さんは、きっといい上司であり……意地を張った私にとってイジワルな男でもあると思う。
「落ち込んでませんってば!」
放っておいて欲しい。けれど本当は慰められて嬉しい。なのに意地を張ってしまった手前、後には引けない。
複雑な感情が絡み合って、つい口調が強くなってしまった。
少しだけ驚いた様子を見せた綾部さんの表情に、自分の失態にハッと気付かされ息を飲む。
「す、すみません……でも本当に大丈夫ですから……」
昂ぶった感情と自己嫌悪で再び涙が込み上げそうになったのを、私はぎゅっと唇を噛みしめて堪えた。
これ以上泣き顔を見られたら嫌だと思い、慌てて綾部さんの脇をすり抜けドアに向かい
「あーお腹すいた。食堂行こうっと。課長も早く行かなくちゃ日替わり定食売り切れちゃいますよ」
などと無理矢理に明るく振舞って、私は彼に背を向けその場を後にした。