イジワル上司と秘密恋愛

***

どことなく気まずさを抱えて午後の業務を迎えたのは私だけだろうか。

泣き顔を見られた上、下手な言い訳で逃げ出してしまったせいで、なんだか綾部さんの顔が見られない。

「ちょっと店頭のヒアリング行って来ますね」

私は自分のスケジュールを変更して外に出る理由を見つけると、なるべく綾部さんの方を見ないようにして足早にフロアから抜け出した。


真夏の炎天下、ヒアリング協力してくれる得意先を回ること数時間。

すっかり汗だくになりながらも私はそれなりに良質のデータを集めることが出来て、ホクホクと満足した気分で帰社した。

やっぱり生の声は違うな。お客様のニーズが具体的に得られるし思ってもみなかったアイディアに繋がる。

これをどんな商品開発や販売促進のアタックに繋げようか、あれこれ頭で思い描きながら会社に戻ってきた私は昼の気まずさなんかすっかり忘れていたというのに。

 
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